2007年6月21日
提示技法プロジェクト報告書
棚原
プロジェクトの目的について
1.目的
情報化社会と言われて久しいが,情報を受け手に提示するディスプレイに関しては,発光デバイスである視覚ディスプレイ,空気振動伝播デバイスである聴覚ディスプレイの他,五感に対応した各種ディスプレイが提案されているが,視覚・聴覚ディスプレイが主流を占めている.
一方総務省が策定した方針には臨場感通信をはじめとする,人の五感にいかに適切に空間情報を伝えるかが問題となる研究課題が重要項目として挙げられている.
視覚ディスプレイにおいては,発色・重量といったデバイス的な側面の他,より鮮やかに感じるように信号をエンハンスする信号処理によりデバイスの性能向上以上の効果が得られるような試みが行われている.同様に聴覚ディスプレイにおいても信号処理による改善が試みられている.
しかし,空間情報を人間がいかに知覚しているかの解明が十分ではないこともあり,未だ研究課題が多数残っている.特に聴覚特性に関しては未解明な部分が多いことと,情報を受取る耳が2つであるのに対して制御デバイスを2つ以上使用することが可能であることから,信号処理の可能性が高いものの十分な解明が遅れている.
そこで本プロジェクトでは空間情報を適切に提示する技法を確立することを目的とし,特に知覚特性に基づく信号処理技法に着目することで,従来の厳密な提示技法とは異なる,手軽で簡便な提示技法の確立を目指す.
2.現状
地上デジタル放送が開始され,アナログ放送と比較して高画質・高音質[1]になり,一部の5.1chサラウンド[2]放送では臨場感のある放送が提供されている.しかし,現在販売されている地上デジタル放送対応テレビは高画質・高音質に対応しているが,テレビそのものについているスピーカは左右一つずつの2chステレオ[3]しかついていない.2chステレオは最適な聴取位置の場合、前後方向に対してある程度の制御はできるが左右方向に対しての制御は難しい[3].聴取環境を5.1chサラウンドにするには,テレビ本体とは別にスピーカとスピーカを駆動させるアンプを購入する必要があり,さらにスピーカを聴取者の正面,右前方,左前方,右後方,左後方,低音出力用サブウーファーを設置しなければならない[4].
2chステレオで左右方向に対して制御が可能であれば,5.1chサラウンドの変わりになり臨場感が得られると考えた.
[参考文献]
[1] 社会法人デジタル放送推進協会 http://www.dpa.or.jp/chideji/faq/chara_q1.html
[2] e-Words http://e-words.jp/w/52E1chE382B5E383A9E382A6E383B3E38389.html
[3] 日本オーディオ協会 http://www.jas-audio.or.jp/m/about/01/index.html
[4] 日本オーディオ協会 http://www.jas-audio.or.jp/m/about/07/index.html