モダンデザイン
■目的または到達目標
建築やインテリアのデザインを志す者にとって必要となる基本的知識として、主に19世紀から現代に至るまでの西洋を中心としたデザインの歴史を解説します。とりわけ都市・建築・インテリア作品などとデザイン運動および建築家との関係について、できるだけ具体的に説明します。単なる歴史の流れという枠組みにとらわれず、幾人かの建築家の言葉や作品分析を通して、モダンデザインにおける空間デザインの変化を概観します。また、近年の空間研究における新しい視点について、概説します。
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■授業の内容
○第1回 モダンデザインの潮流
19世紀から現代に至るまでの大きな時代のうねりを近代建築を中心に概観します。それらのエポックのうちの多くは、新技術であったり、ある一人の天才の系譜であったり、運動であったりしますが、各論は次回以降に譲ります。
○第2回 モダンデザインの萌芽
時代は本来、区切ることのできるものではありません。小説や映画はかならず始めと終わりがありますが、人生がそこで始まり終わる訳ではないのと同様に、「それ以前」と「それ以後」とは連続しており、「それ」はリボンの一部に過ぎないということを理解するために、近代につながる近代以前のデザインについて技術史を中心に解説します。
○第3回 近代初期の運動
長かったモダンデザイン胎動期を経て、イギリスで始まったアーツアンドクラフト運動を皮切りに、アール・ヌーヴォやウィーン分離派、ドイツ工作連盟など、多くの新しいデザイン運動が生まれました。彼らの活動を連続的に概観します。
○第4回 近代初期のもうひとつの姿
運動にはつながらなかったものの、近代初期にきら星のごとく輝いた建築家がいます。
オーギュスト・ペレ、ベルラーヘ、ガウディ、ルイス・サリバンらをとりあげ、その後のモダンデザインに対する影響について解説します。
○第5回 表現主義と構成主義
ドイツ表現派やアムステルダム派など表現主義のデザインとデ・スティルやロシア構成主義など構成主義のデザインとは、一見相容れないかのように思われるかもしれませんが、じつは非常に密接な関連があります。20世紀初期のモダンデザインについて詳説します。
○第6回 バウハウスとCIAM
モダンデザイン、とりわけその後のインダストリアルデザインに対し、決定的な影響力を持つバウハウスと、いわゆる近代建築の考え方が世界中に大きな影響を与える場となったCIAMに関連する建築家、およびその時代背景について、解説します。
○第7回 近代建築の三大巨匠
巨匠と呼ばれる建築家の中でも別格とされるル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライトについて、作品と理論を概観し、彼らがその後のモダンデザインに及ぼした影響について解説します。
○第8回 日本における近代建築
20世紀以降、いわゆるモダンデザインは、日本においても広く普及しました。日本における近代建築の潮流は、未だ不明確な点が多いのですが、最新の研究成果をもとに日本のモダンデザインを概説します。
○第9回 ブルータリズムとヴァナキュラー
戦後復興期を経て、近代建築は常に変化を続けています。戦後の建築史については、未だ不確定な部分が多いのですが、1940年代から60年代にかけて、時代の変遷とともにデザインも変遷していく様子をみていきます。
○第10回 ポストモダン
とりわけ日本からの影響が色濃く表れることの多いモダンデザインですが、ポストモダン建築はとくに日本に建つものが少なくありません。建築を情報としてとらえる考え方や構造主義、エイジアン・カオスの影響など、できるだけ多方面からアクセスします。
○第11回 デコンストラクションとミニマリズム
コンテンポラリーデザインの源流と思われるデコンストラクション(脱構築)と呼ばれる思想とモダンデザインの現在的解釈と思われるミニマリズム、およびそれらが建築に与えた影響について説明します。
○第12回 インテリアデザインの潮流
これまで解説した内容を踏まえ、こんどはインテリアデザインに的を絞って、様式史、技術史および文化史として読み替えることにより、近代以前(18世紀)から現代(21世紀)にいたるまでの潮流について概説します。
○第13回 インテリアデザインの巨匠
日本におけるインテリアデザインの位置づけについて説明したのち、シャルロット・ペリアンを中心に、インテリアデザインの巨匠とその社会的・時代的役割について解説し、およびインテリアデザイナーという職能の将来について説明します。
○第14回 空間という概念
「空間」という概念に着目することにより、モダンデザインを再解釈します。空間という言葉の様々なとらえ方を示し、たとえば名建築とされる具体的な事例を挙げて、とくに設計等に即効性のあると思われる空間分析の有効性をみていきます。
○第15回 期末試験
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■受講心得
この講義は、主として建築やインテリアデザインに興味をもつ学生を対象として行われます。したがって、内外のすぐれた建築空間やインテリアエレメントなどを事例としてとりあげますが、自らの制作能力を高めるために、単にこれらの事例を知識として知り、その形をなぞるのではなく、各自の建築空間体験に照らしつつ、その意味を自身の言葉で思考し直すことが望まれます。例えば、茶道をたしなむためには、ある程度の作法を身につける必要があるように、建築空間を心から味わうためには、その種の建築にまつわる文化の素養をもっていることが望ましいと思われます。本講義では、さまざまな建築空間を紹介しますが、日頃から自らの空間体験を「文化の系」の中で考えることができるよう心掛けることをお勧めします。
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■配付資料(参考例)
                 
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