息抜き(ケチャック・ダンス)

ケチャックダンスは1930年ころからバリ島で演じられている踊りだ。
この踊りでは、多くの男声コーラスが「ケチャ・ケチャ」と歌いながら、古くから伝わるラーマヤナの物語を演出している。
《あらすじ》
ラーマ王子は、自分の帝国であるアヨディア国から追放され、妻のシータと弟のラクサマナといっしょに森のなかで暮らしていました。しかし、森のなかに棲んでいる悪魔の王様であるラワナはシータをさらってしまいます。ラーマは森に棲む猿と協力してシータを助け、最後にラワナを殺してしまいます。
この踊りは以下の5段階に分けて演じられています。

1. ラーマとシータとラクサマナが森の中を散歩しているときに、黄金の鹿が彼らの前に現れます。シータはラーマにその鹿を捕ってくるように頼みます。ラーマはこの鹿が森のなかに棲む悪魔の王様ラワナの使いであることを知らずに、鹿を追いかけます。ラーマは、この鹿が悪魔の使いであることを悟ったため、ラクサマナに助けを求めます。シータはとても心配して、ラクサマナにぜひともラーマの様子を見てくるように頼みましたが、ラクサマナは、偉大な王子ラーマが危険な目に遭うとは信じず、この願いをすぐには聞き入れませんでした。シータは、たぶんラクサマナはラーマが悪魔に殺された後に自分と結婚したいのだろうと思い、ラクサマナを責めます。ラクサマナは、シータからうけた屈辱からシータを森にひとり残し、立ち去ります。

2. シータがひとりになったとき、悪魔のラワナはシータをさらって自分の王国に連れて帰ります。

3. ラワナの王宮には、ラワナの姪のトゥリジャタが棲んでいました。トゥリジャタは毎日寂しく過ごしており、王宮に連れ去られたシータと友達になることができました。シータとトゥリジャタがふたりでいるところにハノマンという猿の大将が現れて、シータに自分はシータの味方であることを伝え、助けたいと申し出ます。証拠として、ハノマンはラーマの指輪をシータに渡して、ラーマが無事でいることを伝えます。シータは自分のかんざしをハノマンに渡して、ラーマに助けに来るように伝えてほしいと頼みます。

4. ラーマはシータを助けに来ましたが、ラワナに矢で撃たれてしまいます。この矢は蛇に変身してラーマを身動きのとれないようにしてしまいます。ラーマは自分の味方のガルーダという大きな鳥に助けを求めます。ガルーダはラーマに巻き付いている蛇を殺し、ラーマを自由にします。

5. 猿の王様であるスグリワが、ラワナの軍を追い払ってしまおうとして、ここから猿と悪魔の両軍の戦いが始まります。コーラスは猿と悪魔の両軍に分かれます。悪魔の軍は「チャク・チャク・チャク」と叫び、猿の軍は猿の鳴き声をします。この戦いで猿の軍が勝利を収め、最後にラーマはシータと無事に自分のアヨディア王国に戻ることができます。

(KECAK DANCE ART CENTRE の資料をもとに作成)